「狩り」は猫の本能!
ボクの小さなお友達
今はすっかり、あっちこっちに「人間の家」が建ってしまったけれど
ボクがこのお家にきたばかりの頃は、草の生い茂る空き地が多かった。
ボクは、その中に住む小さなお友達と遊ぶのが楽しかった。
小さなお友達と遊ぶボクを「残酷」と思う人もいるけれど
これは、ボクたち「猫」の本能だから・・・仕方ない。
ボクはよく、
カヤキリさんや、カナヘビさん
セミさんやスズメさんを追いかけて遊んだ。
ちょっぴりだけ、どんくさいふりをするボクは、
なかなか、捕まえることができなかった。
おかーちゃんは、ボクが気づいてないと思っているけど
ボクは知ってるよ。
ボクが小さなお友達を捕まえると、おかーちゃんは
「すごーぃ!つかまえたの?!かっこいい~」と褒めながら
ボクが「とどめ」を差しちゃう前に
お友達をこそーと逃がしていたこと。
ボクはまた褒められたくて、次の日も、小さなお友達と遊んだ。
ちゅかまえた!
暑い夏も終わりに近づき、夕方に吹く風が心地よくなってきたある日。
その日もボクは、家の近くの空き地で「カナヘビ」さんと遊んでいた。
おかーちゃんはよく、ボクが生い茂る草の中に顔を突っ込んでいると、「小さなおじさんと遊んでいるの?」と声をかけてきたので、
ボクはてっきり「カナヘビ」さんが「小さなおじさん」というお名前だと思っていた。
だけど、おかーちゃんは目が悪く、カナヘビさんが見えていなかったらしい。
おかーちゃんの言う「小さなおじさん」って、ボクにしか見えていない「妖精」さんがいると思っていたみたい。
・・・アホだよね。
おかーちゃんはボクが飽きるまで、いつも傍で、じーっと、待っていてくれた。
「いいから、ちゅかまれ!」
ボクは、カナヘビさんに言った。
「やなこったぃ!」
ボクとカナヘビさんのにらめっこ。
どれくらいの時間が経っただろう。
あたりはすっかり夕暮れが進み、ほんの少し薄暗かった。
「えいっ!」
ボクは思いっきり、生い茂る草の中に頭を突っ込み、口を大きく開けた。
閉じた口の中に、手応えがあった。
「やった!カナヘビさんをちゅかまえた!」
ボクは、ばーちゃんにも褒めてもらいたくて、カナヘビさんを口にしっかり咥えながら、しっぽをピーンと立てて意気揚々と家に向かって駆け出した。
・・・が、何かが変だ。
咥えたそれは、ずるずると妙に長い。
急いで家に向かって走るボクに、おかーちゃんが後ろから声をかける。
「宇宙-sora-くぅ~んっ、それ、違ぁうーっ。それ、ただの草だよ~っ」
草の中から、カナヘビさんがせせら笑う。
「へへーん、ばか猫ーぅ」
・・・はぁ~。
ボクは溜息と一緒に、口に咥えた長ーい草を足元に落とした。
あの日のボクの落胆ぶり。
おかーちゃんの目に今でも焼き付いているらしい。
もぅ・・・忘れてくれないかな。