宇宙-sora-物語|宇宙-sora-が生きた日々の記憶17|ボクと座敷童の3日間

ボクの生きてきた日々

 そいつらは、突然やってきた

あれはまだ、ボクが小さかったころの記憶。

その日の夕方。
いつものようにボクは、おかーちゃんがお仕事から帰ってくるのを待ちながら、家の中から外を眺めていた。

と、その時だった。

「・・・・えっとぉ」

あれ?
ボクの目、悪くなったかな。

ボクはしばし、ちっぴり足りない頭で考えた。
なぜなら、今、ボクの目の前を、ふたりの小さな子供が横切ったのだ。

それだけ聞けば「別におかしなところ、ないじゃん」って思うかもしれない。
窓の外を、子供が横切ることはよくあることだ。

だけど。
やっぱりなにか「変」なのだ。

だって、そこはボクの家の「お庭」なのだから。

ボクが考えていると、おかーちゃんの車が帰ってきた。
車のドアが開き、中から出て来たおかーちゃんもまた、固まっていた。

言っておくが、おかーちゃんは独身である。
なので、「人間」の子供は、この家にはいない。

もしかして

こ、これがいわゆる
座敷わらしってやつなのかぁあっ?!
 

・・・の、わけもなく。

座敷童の正体

「えっとぉ。キミたち?そこで一体、何をしてるのかなぁ?」

おかーちゃんが、庭の中を楽しそうに駆け回っていたふたりの幼稚園児に問いかけた。

「えっとねーぇ。いっちゃんとーぉ、遊んでいるのぉー」

幼稚園児のひとりが、おかーちゃんの問いに答える。

「そぉかー。そりゃぁ、よかったねぇ」

おかーちゃんが、戸惑いながらも、にっこり笑ってみせる。
子供が苦手なおかーちゃんの、精一杯の努力だ。

「うんっ。あ、いっちゃぁーん!まってぇーっ」

問いに答えた幼稚園児が、先に行ってしまったもうひとりの幼稚園児を追いかける。

「気を付けてねぇぇぇ」

おかーちゃんは、柵を乗り越え公園に出ようとしていたふたりの幼稚園児に向かって「ばいばーい」と、手を振った。

ボクたち猫も、かなり自由奔放なイキモノだけど。

人間の子供も、結構「自由」だよね。

ボク、思い出した。
あの座敷童・・・もとい。
あの幼稚園児、いつも僕の家の裏にある公園の滑り台で遊んでいるふたりだ。

謎は解けた。

じ、自由すぎる

次の日。

ボクはお家の横にあった空き地で、小さなお友達と遊んでいた。
おかーちゃんは小さな椅子を持ってきて、そんなボクをじっと見守ってくれていた。

するとあの幼稚園児のふたりがまた、ボクの家の裏にある公園に現れたのだ。

横に長いその公園には、出入り口が3つある。
そのうちのひとつから入ってきた幼稚園児たちは、ボクたちの姿を空き地の中に見つけると、
いま入ってきた反対側の入り口からボクたちのいる空き地に入ってくれば一番近いのに、
ふたりはわざわざ少し遠回りをして、なぜか、ボクの家のお庭を柵を「よいしょ」とまたいで、テケテケテケッと近寄ってきた。

ボクも、おかーちゃんも
目を点にしながらその様子を見ていた。

そして、前の日に「いっちゃん」と呼ばれていた幼稚園児が、小さな椅子に座っていたおかーちゃんの背中に「ぼふっ♪」と覆いかぶさってきた。

「ねぇねぇ?誰のおばちゃん?? まぁ、いっかぁ」

あまりのことにボクは目をまんまるくし、おかーちゃんの背中に覆いかぶさっている幼稚園児を見ていた。
ボクの心臓は、バクバクしていた。

『お・・・おかーちゃん。な、何が起きてるの??』

怖くて動けないボクに、『心配しなくてもいいよぉ』と、おかーちゃんが微笑んだ。

い、いくら『子供は元気があるほうがいい』と言っても、これはちょっと、自由すぎやしませんか??
ママさぁーん。ちゃんと子供たちに教えないとダメですよ???

【知らないおばちゃんに声をかけちゃぁ、ダメですよぅ】って。
おかーちゃんに食われちゃっても、知らないからね。

「ねぇねぇ、誰かのおばちゃん。なにしてるのー?」

おかーちゃんの背中に覆いかぶさった幼稚園児が、聞いて来た。
おかーちゃんは、幼稚園児を背中に乗せたまま、

「猫のお散歩ですが・・・」

答えると

「え、ねこぉ??」

ケラケラと笑いながら話しかけてきた「いっちゃん」と呼ばれる幼稚園児は、おかーちゃんの背中越しにボクを見て、声が静まった。
そして

「・・・すっげぇ でぶぅ」

と、真顔でぼそり。

かっ、ちーん!

『ぉいっ。いくら子供(ガキ)だからって、ボク、猫パンチくらわすぞ!?その前に言うことあるんじゃないのか?あ、可愛い~とか!』

さすがにボクは我慢が出来なくなって、家に向かって逃げ出した。
ふたりの幼稚園児を避けるようにして庭の裏から玄関まで来て、その足が止まった。

『な・・・っ、なんでそこにいるんだよぅっ??』

あの幼稚園児ふたりは、ボクより先に玄関の前に居たのだ。

「なんでこっちに来たのぉ?」

意味不明なことを、ふたりの幼稚園児は笑いながら聞いてきた。

『なんでって、なんで?なんで・・・そりゃぁ、ここがボクのお家だからだぁああっ!』

家の中に入れずボクが困っていると、家の中から
「おぉい、何してるんだぁ?」と、じーちゃんが声をかけて来た。

「え、なぁに??どぉしたのー?」

すると幼稚園児たちは、声がした部屋の窓に駆け寄り、窓の前にかけてあった「すだれ」を持ち上げ、部屋の中を覗き込んでいた。

じ・・・自由すぎる。

3日目

いつものように、おかーちゃんがお仕事から帰ると、ボクはおかーちゃんと一緒にお庭で遊んでいた。

さすがにもぅ来ないだろうと、ボクは油断していた。
が!あのふたりは、またしても現れたのだ。

おかーちゃんとお庭でまったり寛いでいると、家の裏にある公園のほうからあの声が聞こえて来た。

「いっちゃーん、こっちぃ!早く来てぇ!こっちから中に入ってぇ!」

はぁっ?!
なかに??
中に入れって・・・何だっ?

だぁかぁらぁぁああっ、
ここはボクん家のお庭なんだってばぁ!!

おかーっちゃん!
あいつらがまた来たよっ!

ボクは心臓をバクバクさせながら、声がするほうを見ていると、あのふたりが姿を見せた。

そして

「あ、またいたぁっ。ねぇ、なんでここにいるのぉ?」

またしても、ケラケラと笑いながら意味不明な質問をしてきた。

「だってここ、宇宙-sora-君のお家だもん」

そう、おかーちゃんが答えると、ふたりは真顔になって

「・・・うそつきぃ」

声を揃えて言った。

はぁっ?!
うそつきって、何がだ?
だってここは 本当にボクの家だもんっ!

どうやらこの二人は、ボクの庭を「公園」の続きと思っているようだった。
しばらくボクの家の庭で追いかけっこをしていたと思ったら

「ねぇ?どっち?こっち?」

と、またわけのわからないことを聞いてきた。

「な、何がですか?」
おかーちゃんが困った顔で聞き返す。
「家、どっち??」
「どっちって、これだけど」
おかーちゃんは、家を指さす。

ボクの家は、よそのお家からすると横にちょっと長く、上から見ると「L字」のようになっている。
そして、玄関が真ん中にある。
なので、この幼稚園児は玄関を挟んで「右」の家か「左」の家か?って聞いているらしかった。

「それはわかるっ!じゃぁ、あっちは?」

幼稚園児は、横から突き出た感じになる部屋を指さした。
おかーちゃんが「両方だけど」って答えたら
「・・・ふぅん」
そう一言だけ残すと、庭で遊ぶのがつまらなくなったのか、公園に戻ることはなく、駐車場を出てどこかへ行ってしまった。

それにしても、なんとも変な質問だったと思う。
「家がどっち」か聞いて、「これ」って指さしたら「それは、わかる!」って、どういうことだ?
わかっているなら、聞くなよな。

このままいくと、そのうちボクの家の中を走り回りそうな勢いだったけれど
それ以来このふたりは、ボクのお庭に現れることはなかった。

あれはいったい、なんだったんだろう。

子供って・・・

その頃、ボクの家の庭には、ちょいちょい人間の子供が出入りしていた。

ある日、ばーちゃんが洗濯物を出そうと思って窓を開けたら、
小学生くらいの女の子が二人、縁側に座って遊んでいた。

驚いたばーちゃんだったけど、怒るでもなく、
「あら、そこでなにしてるのぉ?」
そう聞くと、
「しーっ!かくれんぼっ。隠れてるのっ!」
逆に怒られてしまった。
「あ、そぅかい。そりゃぁ悪かった。鬼さんに見つからないようにね」
と、静かに窓を閉めたばーちゃん。

子供って・・・自由すぎて、怖い。

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