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宇宙-sora-物語|宇宙-sora-が生きた日々の記憶【ボクとカヤキリ】

ボクの生きてきた日々

ねぇ、おかーちゃん
憶えている?
今ではすっかり、いろんなお家に囲まれちゃったけれど
あの頃はまだ、ボクのお家の周りには他のお家がなくて
屋根の上で夜風を楽しんでいると、周りの空き地の草むらからいろんな「虫さん」が飛んできてたんだ。

あの頃のボクは
夜、屋根の上で虫さんを追いかけて捕まえるのが楽しみだったんだ。

 ボクとカヤキリ

夏が近づくと、その薄緑色の虫さんは毎晩お部屋から漏れる明かりに誘われて、お屋根の上に飛んできた。

屋根から滑り落ちないように気をつけながら、ボクはどったん、ばったん。
カヤキリさんを追いかけた。

「おかーちゃん!見てっ!ボク、また、ちゅかまえたっ!ねぇ、しゅごい?」
そいつを捕まえるたび、ボクは、おかーちゃんに見せたくて急いでお部屋に戻る。
そのたび、おかーちゃんは嬉しそうに拍手して褒めてくれるから嬉しくなって、
捕まえたカヤキリさんをおかーちゃんに「はい、どーぞ!」ってプレゼントすると、もう一匹捕まえたくてベランダに出た。

でも。
ボクが頑張って、カヤキリさんを捕まえようとしているのに、
おかーちゃんは時々待ちきれず、
「そーちゃん(ボクの呼び名)、おかーちゃん、明日もお仕事だから先に寝るよー」
って、お部屋の電気を消してさっさと寝てしまうことがあった。

そんなときは、ボクは枕元にこっそりカヤキリさんを置いて、おかーちゃんにプレゼントしてあげたんだ。

「きっと明日の朝、おかーちゃん褒めてくれるよね」
朝が来るのが楽しみだった。

でも、たまにはボクも食べてみたくて
おかーちゃんにはあげずに、こっそり食べたこともあった。
「でも、ちょっとだけ残しておいてあげたほうがいいかな」
そう思って、おかーちゃんの分を残しておいてあげたこともあった。

***次の日の朝。

「そりゃまぁ確かに・・・」
おかーちゃんは目が悪く、寝起きの顔で頭をかきながら、ダイニングのテーブルに顔を近づけていた。
テーブルの1本だけ残しておいた「く」の字に折れ曲がったカヤキリさんの「足」。
おかーちゃんの分。
「ここはご飯、食べるとこだけどさぁ~」
それを指でつまんで持ち上げながら、おかーちゃんが何やらボヤいていた。

「ありがとねー」
そう言いながら、ポイッとゴミ箱に捨てたのを、ボクは見逃さなかった・・・。
それ以来、おかーちゃんにプレゼントするのはやめたんだ。

 雨上がりのある日

その日の朝は、
前の日から雨が降り続いていて、なかなかお散歩に出して行ってもらえなかったんだ。
でもお昼くらいになる頃には雨は止んで、ボクはようやくお外に連れて行ってもらうことができたんだ。

でも、何をするでもなく。
雨でまだ湿っていた門柱の上に座り、家の周りを「にゃるそっく」。
まぁ、あの頃はまだ「にゃるそっく」なんて言葉はなかったけれど。

門柱の上に座って、お家の周りの様子を見ていたらなんだか眠くなっちゃって、ボクはその場で箱座りをして、うつらうつら・・・。

「ねぇ。眠いならお家に入る??お家に入って寝たほうがよくない?」

遠のく意識の中、おかーちゃんの声が聞こえた。
はっ!とボクは目を覚まし、
「ボク、寝てないっ!まだお家に入らないもんっ!」としっかり踏ん張り、門柱から抱き下ろそうとするおかーちゃんに抵抗してみた。
でもしばらくすると、また、うつらうつら・・・。

「ね、ねっ。宇宙-sora-くん、これっ」

おかーちゃんが呼ぶ声に「ね、寝てないよっ!」ボクは慌てて目を開ける。
おかーちゃんはボクを起こしていたわけじゃなく、目の前の「何か」を一生懸命「ほらほら」って指さしていた。

「ほら、宇宙-sora-くんの大好きなカヤキリさん」

おかーちゃんが何か言っているけど、
「なぁに??」
そいつは動いてなかったから、ボクにはよくわからなかった。
おかーちゃんは、ボクの目の高さにあった「物干しざお」に止まっていたそいつを、何度か指先で軽く「とんとんっ」とつついていた。

モソッ。

少しだけ動いたそいつに、ボクはようやく「カヤキリさん」だと気付いた。
「おーっ!」
でもすぐに動かなくなってしまった。

「あれ?捕まえないの?」
おかーちゃんは、どうやらボクがカヤキリを捕まえる瞬間を撮りたかったらしい。
携帯のカメラを向けて待ち構えていたけれど、待ちくたびれたらしく1枚パチリ。
カヤキリさん越しにボクを写していた。
おかーちゃんが撮れ具合を確認しようと目を離した隙に、ボクはそいつに「ばしっ!」と猫パンチを食らわし、叩き落してやった。

「ぇー・・・」

おかーちゃんのアホな声が漏れた。
ボクは、落ちたカヤキリさんを追いかけて慌てて門柱から飛び降りてみたけれど・・・

「あれ、いにゃい?落ちなかった??どこ??」

落ちたはずのカヤキリさんを見つけられず、また門柱の上に戻ってみたけれど。

「ぃ、・・・いにゃい」

お、おかちぃ。
ここにいたはずにゃのに・・・。
どこ逃げた??

ボクは、おかーちゃんを睨んだ。
「おかーちゃんっ!隠ちたでしょっ!」

ふんっ!

ボクはおかーちゃんにおケツを向けた。
そしてまた、うつらうつらしたけれど。

「やっぱり、お家に入って寝よー」

ボクは門柱を飛び降り、玄関へ向かって走った。

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