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宇宙-sora-物語|宇宙-sora-が生きた日々の記憶⑤|「ボクの名前は-sora-」

ボクの生きてきた日々

 ボクの名前は『空-sora-』

ご飯を食べてお腹がいっぱいになったボクは、この家の中をもう少しだけあちこち調べて歩いてみた。
けれどボクは、おかぁちゃんと兄弟たちの姿をとうとう見つけることができなかった。
「おかぁちゃん、どこぉ」
ボクは泣きそうになりながら、この広い空間でペチョンと座りこんでしまった。
おかぁちゃんの姿も兄弟たちの姿も見つけられず心細くなったとき、また、あの視線を感じた。
この空間に、ほんのわずかに漂っているニオイの持ち主の視線だ。

ボクはその姿をさがし、見つけた。

先住猫の『なつ』

視線の持ち主は、鼻の上から耳の先と背中が真っ黒な、ボクより少し大きな白黒の猫が高いところに座っていて、ボクを見下ろしていた。
なにより特徴的なのは左の目だった。
ボクから見て「左」だから、その猫にとっては「右目」になる。
その目は白く濁っていて、もう一つの目より大きかった。
「・・・キミ、誰?」
ボクは思わず声をかけると、その猫は少し驚いた表情をしてみせた。
「私が見えるの?」
「うん」
そう答えると、その猫は嬉しそうな表情になった。
「私、なつ」
「なつ?」
「この家の人たちにそう呼ばれていたのよ。はじめまして、ソラくん」
「・・・ソラ?」
「あなたの名前、ソラでしょ?」
『なつ』という名前の猫は、ボクに向かってそう言った。

ボクの名前?ソラ?
「ボクの名前は『ねこちゃん』のはずなんだけど」

ボクが首をかしげると、『なつ』はボクがこの家に来るちょっと前のことを話してくれた。

その日、家に帰ろうとしたら、もう一人の私がすぐそばに倒れていたの。
身体を起こそうと思っても動かないし、なんとなく『私、この中に戻らなきゃ』って思ったけれど、うまく戻れなかった。
私自身、私に何が起きたのかは憶えてない。
でもこのままここにいても仕方がないから、もう一人の私をそのままにして家に帰ると、この家の人たちには私の姿が見えなくなってしまっていた。
私はずっとここにいたのにね、ママたちには私の姿がどうしても見えなくて
ママはね、ずっと泣きながら私のことを探したの。
それが悲しかったんだけれど、私にもどうすることもできなかった。
私が傍で鳴いても、気づいてもらえなかった。
でも時々、ちょっとだけ何か感じるみたいで、「なつ?」って呼びながら私を見るんだけど、それ以上は無理だったみたい。
そのうち探し疲れちゃったみたいで、ママはお仕事に行く以外はあまりお外に出なくなっちゃって。
そんなある日、そこの窓辺で仰向けになりながら青いお空を眺めてね、こう言ったの。
もう、猫はいらないけれどさぁ、

「でも今度、また縁があって猫が家に来たら、その時は「空(ソラ)」って名前にしようね」って。

だからあなたの名前は「ソラ」よ。と「なつ」は確信しているかのように言った。
その時だった。
これからボクのおかーちゃんになる人間が、
「ねぇ、なんて名前にしよう?」
これからボクのばーちゃんになる人間に聞くと、
「ソラにするんじゃなかったの?」
「ソラでいい?」
そんな会話をしたのは。
『なつ』は、ほらね。という表情でボクを見て笑った。

この時からボクは「ねこちゃん」から「ソラ」という名前に変わった。
ボクには人間たちの使う文字の『漢字』というものが解らなかったけれど、ボクの名前になった「ソラ」の漢字は『空』だったらしい。

でも変ね。と、『なつ』は言う。
「なにが?」ボクがそんな表情を『なつ』に向けると、
「てっきり女の子を連れてくると思ったのに」
『なつ』が続けた。

もし今度また猫が家に来るなら、次もまた女の子がいいなぁ。
男の子はマーキングとか大変だし。
女の子は体も小さいし柔らかいし、やっぱり女の子がいいなぁ。
でももし、これから野良ちゃんが姿を見せていざ抱き上げたら男の子だったらどうしよう・・・。
でも一度抱き上げた以上は、「いーらない」って捨てられないし。
野良はそこが問題だよねぇ。

そんなことも話していたというのだ。
そういえば、ボクをここへ連れてくる前におかーちゃん、ボクを見て『女の子だって!』と言っていた気がする。
おかーちゃん、ボクを「女の子」だと思っているのかな?
ボク、男の子なんだけどな。
大丈夫かな・・・ボク、「いーらない」になっちゃうのかな?
「いーらない」されちゃうと、またあの場所に戻されちゃうのかな。
ボク、ここが少し気に入ってきたのに、そんなの嫌だな。

ボクはまた少し・・・かなり不安になってしまった。

ボク、ここにいてもいいのかな?

おかーちゃんたちは、お買い物の後片付けが終わると、
「ちょっと休憩」と言って、ふかふかのお布団がかかった『こたつ』という物の中に潜り込んだ。
「空-sora-も今日は疲れたでしょ。一緒にお昼寝しようね」
おかーちゃんたちはそのままゴロンと横になってしまった。
どうしていいのかからずボクが立ちすくんでいると、『なつ』が二人の間に入って横になってみせたのでボクも真似して、おかーちゃんとばーちゃんと『なつ』の横に飛び込んでみた。
おかーちゃんとばーちゃんがクスクスと笑ったので、ボクはちょっぴりホッとした。

「こたつ」というものに掛けられたふかふかのお布団は、おかぁちゃんのお腹に抱かれているように心地よくて、ボクはすぐに眠りについた。

しばらくして、ガチャり。という音とともに部屋のドアが開き、また一人、人間が入ってくる気配でボクは目が覚めた。
これからボクの「じーちゃん」となる人間がそこに立っていた。

おかーちゃんとばーちゃんがボクを隠すようにしながら笑いをこらえていることに、じーちゃんはすぐに気付いた。
「あっ、お前らまた、何を連れてきた?!」
ボクを覗き込み騒ぐじーちゃんに、おかーちゃんとばーちゃんは横になりながら
「何って、見りゃわかるでしょ」
「どう見ても、猫じゃん」
しれっ、と答えてた。

『なつ』がそっと教えてくれた。
じーちゃんは優しいけれど、家の柱や壁を爪でガリガリされるのが嫌だから、ボクたち猫があまり好きじゃないらしい、と。
「だから、気をつけなさいね」って。

おかーちゃんたちはボクのことを「女の子」だと思っているし、じーちゃんは猫があまり好きじゃないらしい。
ボクはこれから、どうなっちゃうんだろう。

そんな不安を抱えながらも、ふかふかとぬくぬくの心地よさには勝てず、ボクはまた眠ってしまった。

その日の夕方

ずいぶん前にお昼寝から覚めて、ボクは『なつ』・・・なっちゃんの真似をして、おかーちゃんにおケツを向けてコタツの上で伏せていた。
なっちゃんは「女の子」だった。
なっちゃんの動きを真似をしていたら、もしかしたら「女の子」ってごまかせるかも?
ボクはそう思っていたのだけれど。

その日の夕方、おかーちゃんがばーちゃんに向かって、こう言った。
「ねぇ、おかぁさん。・・・空-sora-もしかすると男の子かもしれんよ?」
おケツの穴のしたに、小さな『ぽっち』が二つ並んでる。
これ、もしかしたら・・・タマと違う?

しまったっ!!
バレるの、早っ。

 

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