「動物にも権利がある」という考え方。
それは、感情によるものではなく、「思想」というべきものであり
ベンサムの功利主義的道徳哲学に基づいたもの。
動物は、痛みを感じることができるんだよ。
だから、動物たちには
「痛み」や「苦しみ」を受けない『権利』があるんだ。
そして人は、
その『権利』を法律で守ってあげなければならないんだよ
動物への配慮の広がり、動物の法的保護の開始
動物への配慮の広がりや動物の法的保護の始まりは、まさに「文明」の証だともされ、
ヴィクトリア時代の後期における狩猟への批判者たちは狩猟が
「より高尚で、より優しい文明の影響によって、やがて消滅することだろう」
引用:『階級としての動物ヴィクトリア時代の英国人と動物たち』ハリエット・リトヴォ著
と、論じていたらしいんだ。
ベンサムに次いで1892年にヘンリー・ソルトが
もし人間が権利を持っているのなら、動物だって権利を持っている
そう言ってくれたの。
ヘンリー・ソルト【動物の権利】
ヘンリー・ソルトはね、
動物擁護とかを具体的な目標とした急進的な人道主義団体「人道主義連盟」の指導者で、
【動物の権利】って本を出版した、精力的な著述家として知られているんだ。
あ、著述家って言うのはね「文章を書くことを職業」としている人のことね。
簡単に言えば、物書きさん。
ヘンリー・ソルトの「動物擁護」の考え方は、動物と人間をある意味、対等なものとし、
それは独自の「動物の権利」に基づいていて、
動物を積極的に「人間と同一の立場」に位置づけようとしていたんだ。
「人道主義連盟」は、
1891年にヘンリー・ソルトと、菜食主義者でも知られるハワード・ウィリアムズたちによってロンドンに設立。
人道主義の目的は
○ 残虐さや、間違った行為が果てしなく続くことを防ぐこと。
○ 感覚のある「生命(いのち)」あるすべての苦しみを可能な限り正していくこと。
自己防衛、絶対的な必要性が正当に主張される場合だけをのぞいて、いかなる「生命」に対して直接的、間接的に苦痛を与えるのは不正である、というもので、それは「戦争への批判」から「動物の虐待防止」まで幅広いもの。
「人道主義連盟」は、
その頃の社会主義者たちの多くにとって、より周辺的な関心事だった「動物の擁護」も主要な目的に据えられていたんだ。
人間によって人間に課せられる残虐行為
人間よりも下等な動物に対する意図的な虐待
の両方を問い正そうと叫んでいたんだけれど、実際は
〇 ファッションや利益、職業上の発展(薬剤の開発)のために動物へ苦痛を与える事への批判
〇 食料となってしまう「ウシ」の輸送と食肉処理場における苦痛の軽減
これらが活動の目的に・・・。
連盟の活動は、
動物擁護に関係する代表的なもののひとつに、イギリス王室で行われていたバックハウンドっていう犬を使った「鹿狩り」に対してしつこく批判を続けた結果、
700年もの歴史を持つ
この狩猟を辞めさせることに成功したんだって!
他にも、
イートン校での「ビーグル犬」を使った狩猟への批判
食べられてしまう牛の運搬や解体処理の過程での苦痛の軽減
なども作戦行動もしていたんだ。
でもそれは必ずしも全てのヒトから評価されていたわけではないんだけど、ね。
王室の狩猟への批判は、「王立動物虐待防止協会」からの支持は得られなかったんだ。
ま、そりゃそうだよね。
ヘンリー・ソルトが言うには、ね。
人間にとっても、動物にとっても、最高の道徳的目的である。
動物には個性も理性も、性格だってある。すなわち
動物が人間の人格に相当する「特性」を持っている。ということは
周囲の状況が許す限り、この特性を実現する権利というものを持っている。
ということなんだ。
つまり動物も
〇 その種に相応した適度に制限された自由を持っていて、自分の「生」を生きる権利がある。
〇 動物の権利とは、優しく思いやりを持って扱われる権利である。
〇 動物に対して同情を持つことと、明確な権利を認めることとは別の問題である。
わたしたちは、動物に慈悲を与えるのではなく、動物を公正に扱わなければならない。
〇 動物の権利を認め、動物を公正に扱うためには、
動物を人間とまったく違った種類のものとして見るのではなく
古くからあった両者の深い溝を取り除き、共通の絆を認めなければならない。
人間が権利を持っているなら、疑うことなく動物も権利を持っている。
と、いうことなの。
ベンサムは「苦しみを受けない権利」を主張したけれど
ヘンリー・ソルトは「制限された自由」を主張してるんだ
現在の動物の権利の思想は、ベンサムとソルトが主張する「権利」の思想を発展させたもので、
昨今の「動物愛護」で論じられている重要な部分のほとんどは、
ヘンリー・ソルトの「動物の権利」の中のものなんだ。
参考文献:愛玩動物飼養管理士テキスト2級-1
参考文献:神戸市外国語大学外国学研究85巻「光永 雅明」著