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宇宙-sora-物語【番外編】宇宙-sora-が生きた日々の記憶【なっちゃんとピンポン玉と】

ボクの生きてきた日々

時々。
ボクにはふと気になる「隙間」がある。
そこに「あれ」がまだあるような、そんな気がするから。

 「なっちゃん」とピンポン玉と

ボクがこのお家に来たばかりのころ、
ボクのお家には白黒猫の「なっちゃん」がいた。
「なっちゃん」は、片方の目が大きく、白く濁ってた「おんなのこ」だった。

野良猫のママさんから産まれた「なっちゃん」は、気づいたらママさんとはぐれてしまったらしい。
一度は人間の男の子に拾われたけれど、気づいたら「けーさつ」というところに「落とし物」として届けられ、それを、「おかーちゃん」が連れて帰ってきたのだとか。

「夏」に出会ったから、「なっちゃん」なんだって。

ママさんとはぐれてしまい、自分で顔を洗うしかなかった「なっちゃん」は、その時に自分の爪で痛めてしまったらしい。

おかーちゃんと出会ったときにはすでに、目が大きく白く濁ってしまっていたらしい。
すぐに病院で診てもらったけれど、すでに手遅れな状態だったのだとか。

ボクがこのお家に来た時「なっちゃん」の姿はもう、「おかーちゃん」や「ばーちゃん」たちには見えていなかった。
だけど、「なっちゃん」はしばらくの間ボクと一緒にいてくれて、ボクにいろんなことを教えてくれたんだ。

隙間の中に・・・

あの日。
「なっちゃん」はキャスターのついた小さな「たんす」の下のできた隙間を覗き込んでは、手を突っ込んで何かを取ろうとしていた。

「なにしてるの?なにがあるの??」

ボクは一緒になって覗き込んでみた。
その隙間は、まだ体がうんと小さなボクでも入り込めないくらい狭かった。
真っ暗な中に、なにか丸いモノがあるのが分かった。

「あれ、なに?」
「ぁたいの大好きなやつ。あれを投げてもらうと、コロコロ転がって面白いの。でもいっつも、この中に入っちゃって・・・」

そのたびに、おかーちゃんが長い棒を持ってきてチョチョィと棒を横に振ると、この隙間からコロコロって出てくるから、また追いかけて中に入れては、おかーちゃんが取ってくれていたらしい。
でも、なっちゃんの姿を見ることができなくなってからは、
「もぅ、どんなにお願いしても取ってもらえなくなっちゃった」
おかーちゃんには、ぁたいが見えてないんだもの。仕方ないわよね。

なっちゃんは寂しそうに言った。

なっちゃんと一緒になって隙間を覗き込んでいると、おかーちゃんが「なにしてるの?」って聞いてきたんだ。
もちろん、おかーちゃんには今、「なっちゃん」が見えていない。

なっちゃんとピンポン玉

「あーピンポン玉かぁ?ここにまだ入ってたんだぁ」
隙間の中を覗き込みながらそう言うと、おかーちゃんは長い棒を持ってきて隙間の中でチョチョィと振った。
すると、コロコロ・・・。
「ピンポン玉」というやつが転がり出てきた。

なっちゃんは久しぶりに取り出してもらったピンポン玉に嬉しそうに飛びかかったけれど、ピンポン玉に触れることができず、すぅ~と空振りしてしまった。

止まってしまったピンポン玉を転がすどころか、触れることもできず、なっちゃんは床を叩くだけで、ただ寂しそうにそれを見ていた。
ボクは、なっちゃんの横に座って、それを一緒に見ていた。

「あれ?遊ばないの?」

おかーちゃんはピンポン玉を拾い上げると
「これ、なつかしいな」
そう言ったんだ。

おかーちゃんが、なっちゃんのお話を少しだけしてくれた。

「宇宙-sora-が家に来る前にね、なっちゃんって子がいたんだ。なっちゃんは、これで遊ぶのが大好きだったな」
『ぅん、なっちゃんから聞いたよー』
と返事をしてみても、おかーちゃんには伝わらないけれど。
「それでさぁ。なっちゃんってば。このピンポン玉を追いかけて遊んでは、勢い余ってよくこの下に転がり込ませちゃってね・・・」

とりあえず自分で取ろうとするんだけれど、手を突っ込んではさらに奥に転がり込ませちゃうから、最終的には『おかーちゃん!ピンポン玉、あの中に入っちゃった!取れない!ねぇっ取ってっ!」』って呼びにきたっけ。
しょうがないから長い棒を持ってきて取ってあげようとするんだけれど、おかーちゃんの前に割り込んで一緒に先になって覗き込むから、なっちゃんのオケツがいつも邪魔になって中が見えなくて。
それでもなんとか隙間の中を、棒を左右に適当に振って取り出すんだけど、5分もしないうちにまた勢いよく転がして中に入れちゃって。

がっくり落胆した背中でチラリ振り返って『おかーちゃん、取って・・・ぇ』って表情するから「知らん、自分で取れ!」って、しばらく放置するんだけれど。
でも自分でなんか取れっこないから、「面倒くさいなぁ~・・・」って棒を手にすると、それまでピンポン玉が転がり込んだ隙間を寂しそうに見つめていたのに、「はやく、はやくっ」って目を輝かせちゃって。

でさ。
横にいればいいのに。
前に割り込んできて一緒になって覗き込むから、なっちゃんのオケツがやっぱり邪魔してさ・・・。

おかーちゃんは、その日のことを思い出して笑っていた。
ボクの横では 「そうだったかしら」と、なっちゃんが恥ずかしそうに「フンッ」と鼻を鳴らしていた。

「だから、お前がそこに居たら中が見えんでしょーっ!」
一緒になって隙間を覗き込む「なっちゃん」を抱き上げて横に後ろに退かそうとするけれど、退かしても退かしても強引に割り込んでくるから、仕方なく適当に棒を振ることに。
そしたら今度は、出てくるわ、出てくるわ。
1個だけかと思っていたピンポン玉が2個、3個。
コロコロ、コロコロ。

最初に出てきたピンポン玉を追いかけた なっちゃんだったけれど、後から出てくるピンポン玉にどれを追いかけようかわからなくなってしまい、そのまま動くのをやめてしまった。

どうやら
おかーちゃんがお仕事に行っている間、ばーちゃんが遊ばせていたピンポン玉が全部、この隙間に入ってしまっていたらしい。

ボクのおもちゃ

まだ小さかった頃。
ボクのためにと買ってきてくれた「おもちゃ」がいっぱい入った箱の中には、あの日、隙間から出てきたピンポン玉も入っていたけれど、実はボク、「ピンポン玉」で遊んだことがない。

だって。

なっちゃんが遊べないのにボクが遊んだら、なっちゃんが可哀そうだもの。

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