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宇宙-sora-物語|宇宙-sora-が生きた日々の記憶20|真剣だったボク

ボクの生きてきた日々

ねぇ、おかーちゃん。
覚えてる?
・・・あの日のこと。

あの日のボク。
真剣だったんだよ。

 真剣だったんだ

あの日も、いつもように、おかーちゃんとお散歩。
あの頃はお庭を飛び出して、あちこち冒険するのが大好きだったんだ。
必ず、おかーちゃんがついて来てくれていたから何も怖くなかったし、
広い世界は、見るものすべてがキラキラしていて楽しかった。

あの頃、ボクの家の横はまだ空き地で、枯れ草の山があったよね。
ボクはあの中に潜む虫さんと遊ぶのが大好きだったんだ。

あの日もボクは、枯草の中に大きく飛び込んで、地面をバシバシ叩いて、なんとか虫さんを捕まえようとしたけれど、なかなか捕まえられなかったんだ。
枯草に飛び込んでは、出てきた虫さんを捕まえようと地面をバシバシ、ボフボフっ。
でもすぐにまた枯草の山の中へと逃げられちゃったから、また枯草の山に顔を突っ込んで、逃げる虫さんを追いかけていた。

虫さんに逃げられてばかりいるボクを見て、おかーちゃんは「がんばれー」って言いながら、後ろで笑っていたよね。

どんくさい、って思っていたんでしょ。
ま、いっけどさ。

ボクは、何が何でも虫さんを捕まえて、「ほら、捕まえられたよ!」って、おかーちゃんに自慢したかったんだけど、そんな時、大きな2頭の犬と、小さな女の子を連れた男の人が近づいてくる気配にボクは思わず隠れようとしたんだ。

「・・・こ、こわいかも」
ボクは知らない人が苦手だった。
今も苦手だけど。
今は誰か知らない人が来たら、そそそっ、と走って逃げて、物置小屋の床下に上手に隠れることが出来るけど、あの時は、ぺたーぁ、と、小さく小さく、見つからないようにその場にうずくまってしまったんだ。

「ぅ、うまく隠れられたかな?」
枯草の山の陰に隠れながら、ボクはドキドキしながら息をひそめていた。
「どうか、見つかりませんように。このまま通り過ぎていきますように」
そう心の中で祈りながら。

ところが。
「こんにちは」
おかーちゃんが笑顔で、その男の人に挨拶したんだ。
「・・・おかーちゃんの知ってる人?」
ボクの緊張は、ちょっとだけ解けた。
おかーちゃんが挨拶する人なら、悪い人じゃない。
「猫ちゃんもお散歩?それ、・・・隠れてるつもりかな?」
男の人は優しそうな声で話しかけ、ボクのほうを見てクスリと笑った。
「そうみたいですね」
おかーちゃんは笑いながら答えていた。
男の人が連れた2頭の大きな犬は、隠れるボクを見て「フッ」と鼻先で笑っていた。

うまく隠れていたつもりだったけれど、どうやらボク、丸見えだったらしい。
にゃんだよぅ・・・。
ボク、真剣に隠れていたんだぞ!
笑うニャーっ!

 小さな女の子とボク

「にゃんにゃーん」
ボクがちょっぴりムカっとしていると、小さな声がした。
男の人が連れていた女の子がボクにそっと近づいてきて、ボクの前に静かにしゃがみこむと、そっと手を伸ばしてきた。
逃げたかったけれど、あまりの怖さにボクは身動きができなかった。
でも不思議と、ゆっくりと伸ばされた小さな手からは怖さを感じなかったんだ。
だからボクは少しだけ勇気を出して、鼻先をその手にくっつけてみた。
女の子は、ボクの頭をそっと優しく撫でてくれた。

ボクが家族以外の手を怖いを思わなかったのは、後にも先にも、その女の子だけだった。
それから何度か、その女の子に会うたび、ボクは頭を撫でてもらっていた。

あれからずいぶんと時が経ち、2頭の大きな犬とも、あの小さな女の子とも会わなくなってしまった。
もうどんな顔をしていたのか、ボクは忘れちゃった。

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